相模原高校訪問記

講師 尾形邦裕 (情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 D3)

相模原高校写真1

人の巧みさについて説明

 

ロボットを研究の題材にすると聞くと、多くの方はどんなロボットを作っているのですかと問われると思います。ロボットはただ新しいものを作り続けるだけで、技術や研究が進展するのでしょうか。これは多くのロボット研究者が抱いている疑問なのです。また、ロボットとはただ人のお手伝いをするだけの存在なのでしょうか。人はロボットに人のように考え、高度な判断が出来ることを望んでいます。つまり、ロボットとは人を映す鏡たるべきなのではないかとも考えられています。私はロボットとはただ作られるものではなく、人を映す鏡であると伝えたく、去年度とは異なる新たなテーマで出張授業を行いました。それが本授業のタイトルである「人⇔ロボット」に現れています。

この授業では人型ロボットにターゲットを絞り、人からロボットへの矢印、ロボットから人への矢印という2つのテーマについてそれぞれ説明を行いました。人からロボットへの矢印では、人の運動の計測と解析を通して人の巧みな身体操作をロボットへ応用する方法論について説明をしました。しかし、人の詳細な脳機能や知能の発達などは計測することが困難です。そこで、脳機能のモデルを構築し、それをロボットに搭載することで人の脳機能を解明する方法論について説明しました。これが、ロボットから人への矢印です。

さらに授業では実機のロボットによるデモンストレーションも行いました。ここでは参加した高校生に実際にロボットを動かしてもらいました。また、東京大学構内の案内や学食での食事など授業以外のイベントも行いました。

夏休み中にもかかわらず,1年生から既卒生まで27名の高校生が参加してくれました。授業中には、「ろぼっとの定義とは何か」など難しい質問が出てくるなど、ロボットへの関心の高さが伺えました。また授業のアンケートから、実機のロボットのデモンストレーションに多くの学生が興味を示してくれました。また、ロボットから人の知能を解明するという難しい内容にも関わらず、「ロボットから人、人からロボットみたいにいろいろおきかえて実験することがおもしろそうでやってみたいと思った」のように多くの生徒がこれに興味を示してくれました。また、「介護ロボットは高価で実用化に時間がかかりそうだ」のように自らロボットの今後の展望などについて考察する生徒も見られました。この授業を契機として、自分自身もロボットの将来について考える良い機会が得られたと感じました。

*この授業は相模原高校の生徒が東京大学に訪問することで実現しました。