埼玉県立川越高校訪問記

講師 久保田隆至 (理学系研究科物理学専攻 D4)

 TA 森田裕一 (理学系研究科物理学専攻 D3)

 TA 音野瑛俊 (理学系研究科物理学専攻 D2)

 TA 山口博史 (理学系研究科物理学専攻 D1)

川越写真1

素粒子について話す久保田さん

 
川越写真2

チェレンコフ検出器の作り方を教える様子

 
川越写真3

オシロスコープの使い方を教える様子

 

今回、出張授業をさせて頂くにあたり、自分の中で設定した目標は「敷居の低い」授業をすること。素粒子実験の本質的な測定を分かりやすく説明し、生徒さんと実験することで、「自分でもできそうだ」という意識を持ってもらうことでした。

私がそうであったように、日本の高校生の多くは、程度の差はあれ“漠然と”勉強をしているものだと思います。特に理系科目は、学んでいる知識が実際に使われる現場が想像しにくいのではないでしょうか。そこで、実際の実験に触れ、欲を言えば研究に対する野心(「自分が宇宙の謎を解く!」)を持ってもらえたら、学習の動機付け、進路選択の材料として有用だと思います。また、研究者の育成という意味でも日ごろ税金で研究させて頂いている恩返しになると考え、授業に取り組みました。

授業は補助員の音野瑛俊さん、研究室の後輩の森田裕一さん、山口博史さんと共に行いました。授業の枠は正規の時間割り終了後2時間を頂き、「素粒子実験とは?」の説明に20分、水タンクと光電子増倍管で作った「豆カミオカンデ」で宇宙線を検出する実験に80分、質疑応答に20分で構成しました。宇宙線とバックグラウンドの測定をヒストグラムにし、有意性を検討することを目標に設定。当日は授業開始1時間30分前に現地入りし、先生と最終打ち合わせを行い、定時に授業を開始しました。

素粒子実験の説明は生徒さんが真剣に聞いてくれたので、気持ちよく終了。実験は生徒さんに3つのパートに分かれてもらい、それぞれにこちらから担当者をつけました。各担当者はアドリブを交えて生徒さんと話しながら確実に進行してくれ、測定自体は時間内に終了。データをまとめるのに手間取りましたが、ヒストグラムを無事作成。数字を出してみると、約1σの有意性で、宇宙線を確認することができました。

授業後の質疑応答では、素粒子に関することから、検出器に関することまでたくさんの質問を受けました。アンケートには「興味がわいた」「実際に測定できて良かった」「素粒子を研究する意味がわかった」など、嬉しいコメントもいただけて、個人的には授業は大成功だったと思います。生徒さんの学習、進路選択の一助にでもなれたら幸いです。

最後にですが、今回の出張授業を支えて下さったBAPの皆さん、先生方、生徒さん、研究室の仲間に感謝いたします。ありがとうございました。