千種高校訪問記

講師 渡邉俊一 (理学系研究科地球惑星科学専攻 M1)

千種高校写真1

渡邉さんは高校時代にクラスで
作ったTシャツを着ていきました

 
千種高校写真2

砂山の実験中・・・何が起こる!?

 
千種高校写真3

皆に質問.
紙に答えを書いてもらっています

 

 2009年10月7日,私は久々に母校である千種高校の教室を訪れました.以前と違うのは,私が黒板の前に立っている点です.聴講を希望した生徒が約20人座って待っています.私は緊張して落ち着きませんでした.

 そもそも私はなぜここに立っているのか.それは出張授業を通して後輩に,私が学部生のころから勉強してきたもの―地球科学とアナログ実験―と大学生活そのものを伝え,その面白味を共有したかったからです.
 ここに立つまでには,多少の経緯があります.学部生の頃から,私は自分が行なってきたことをどこかに還元したいと考えていました.そこで博物館や小中学校への出張授業の実験アシスタントとして働ける機会を得させていただきました.その後東京大学の大学院に入ったとき,また新たな機会が訪れます.それが大学院生出張授業支援プロジェクト(BAP)です.「還元する場」として思い入れのある母校を採用するという発想に直感的に食いついた私は,講師として,また運営メンバーとしてもBAPに参加することを決め,母校に赴きました.

 緊張の中,授業が始まります.
 私が授業で重視したのは,「追体験」です.私が学部1年の頃からある素朴な実験(堆積学に関連)に興味を抱いてハマっていった過程を,できるだけ当時の感情(喜び・驚き・失敗の悲しみも)をなぞるようにして説明しました.90分という長時間をいただいたので,実際に実験を行ない,生徒に質問を投げかけて考えてもらったりでき,私が感じてきたことはうまく伝えられたと思います.授業後のアンケートでも,1年生から「実験の結果から掘り下げていく過程が面白かった」という意見をいただきました.
 また,高校では比較的触れる機会の少ない地学についても,火山の写真や実際の噴石を見せることで多くの生徒に興味を持ってもらえました.それも含めて今回の授業が有意義であったと感じ,うれしくなりました.
 この成功は,練習会で他の講師の方や運営メンバーの方からいただいた厳しい意見があったからこそのものです.私は練習会を経ることで授業の質が数倍良くなったと確信しています.

 90分は瞬く間に過ぎ,授業が終わりました.最後,少し時間がなくなり急いでしまったのが悔やまれました.授業後は数人の生徒が実験器具の周りに集まってくれて,実験や大学に関する雑談を楽しみました.将来のことを語る皆は,とても楽しそうでした.

 全て終わった後,私はへとへとになって椅子に腰を下ろしました.この感覚・・・全力を出し切った感覚.正直,ここまで消耗するとも思っていませんでした.私は達成感と心地よい疲労を抱き,高校を後にしました.