旭川工業高校訪問記
講師 森川貴康 (工学系研究科電気系工学専攻 M2)
出張授業始めます
説明中の森川さん
母校である北海道旭川工業高校を卒業してから五年半が経ち、同じ学び舎を出た友人達は様々な道を歩んでいます。
私は卒業後の進路として大学への進学を選び、工学の分野についての研究をより深く行いたいとの気持ちから大学院まで進学させて頂きましたが、高校三年生当時の私は進学し何をするかということについての明確なイメージを描けず、進路についてはどうしたものかと色々悩んでいました。
何故そんなに悩んでいたかと記憶を掘り返してみると、残念な事に当時の私は大学進学に関する情報をあまり収集出来ていなかった様に思います。それは私自身の問題であるということは重々承知しておりますが、やはり進学校と比較すると工業高校というのは進学についての情報を若干得難い環境であるということを、進学校を卒業した友人との会話の中で強く感じました。
周囲からの(本当に)大きな助けもあり、私が大学・大学院で勉学・研究に費やした五年余りの時間は非常に充実したものだったので、「大学生活とはどの様なものか」、「何故大学院に進学したのか」、「大学院ではどの様な研究をしているか」といった私の体験を通して、これから卒業後の進路を決める母校の学生達にとっての、一つの判断材料として役立てて頂きたいと思い、出張授業プロジェクトに参加しました。
平成21年10月15日に行った私の出張授業には、同校情報技術科の1〜3年生、約120名の学生が参加して下さいました。授業では、私の研究テーマであるコグニティブ無線技術の解説を含む前述の三項を話しました。コグニティブ無線技術は周波数利用効率を高めるべく、無線機が自身の置かれた周辺の電波環境を認知し、自立的に適応するという技術で、近年盛んに研究・標準化が行われています。高校生、特に一年生にとっては難しいテーマですが、事前に行った練習会で頂いた意見を出来るだけ多くスライドに反映させた甲斐もあってか、高校生だった頃の私の様に居眠りしている学生は見受けられず、真剣に、そしてリアクション豊かに私の授業を聞いてくれました。
授業の際に配布したアンケートの回答では、「大学や大学院の雰囲気を知れて有益だった」、「大学生活って楽しそう!」、「研究内容が分かりやすかった」等々のとても嬉しい感想や、授業では説明しなかった研究の細かい点に対する鋭い指摘を始めとした、工業高校生らしい多くの感想が寄せられました。
プロジェクトへの参加を決めた頃は、母校出身者である私達は在校生にとって多くの中の一つの選択肢に成り得る訳だから、立派な姿を見せ、きちんと色々なことを教えたいな!等と考えていたのですが、何ともお恥ずかしいことに、終わってみれば一番多くを学び、良い経験させて頂いたのは私の方でした。120名分のアンケートに寄せられた感想は、私の宝物になりました。
最後になりますが、日程の選定から授業の内容に多大な裁量を与えて下さった情報技術科の教員の皆様に改めて深く感謝いたします。生徒のことを第一に考えて物事を決めていく姿勢には大変感動しました。今後も何らかの形で母校に関わっていきたいと強く願っています。